【創作】17作目の追記分

 

現在15,16,17作目と続き物になっているのですが、その17作目に加えた追記分をここにも置いておこうかと。作中で『都合よく新説されてしまう星座の伝説』な設定をちょろっと出したのですが、そんな雰囲気の比較的あたらしいお話ちっくな物を書きました。本編には全く関わりありません。

 

 


 

義足犬の首輪

 開拓時代、生後半年の子供のいる若い夫婦の家に、三人組の強盗が押し入る。

 応戦した夫によって強盗の一人は撃ち殺されたが、強盗の反撃によって夫も重傷となってしまう。

 強盗はまだ息のある夫に銃口を向けて妻へ金品の全てを要求するが、夫婦の暮らしは元より裕福ではなかったため「渡せるような物はない」と告げられる。仲間を殺されて苛立っていた強盗は、夫を見せしめに殺してしまう。妻の口答えが気に入らず、彼女を従順にさせて人買いに売り飛ばす事に決めた強盗は、お次はとばかりに泣き叫んで煩い赤ん坊に銃口を向けた。

 その時、この家族と共に暮らしていた一匹の犬が遠吠えを上げ、そして飛び掛かる。

 強盗が押し入ってきたこの緊急事態をいち早く察知した彼は、酔っぱらって寝ているこの町の保安官の下へ走り、喚き散らして起こした後に、保安官バッジを盗んで追いかけさせて家に戻ってきたのだ。主人が血だらけで倒れ伏し、新しい命の危機を理解した彼は、遠吠えで銃口を自分に向けさせた後、赤子の一番傍にいた強盗の股間を食いちぎる。男の急所を食いちぎられ、泡を吹いてもんどり打って転げまわる強盗の一人を余所に、彼は残る一人にも飛び掛かる。

  予想外の反撃に焦った最後の一人は、銃弾で迎撃を試みたのだが、人より遙かに低い位置で俊敏に距離を詰めきた彼を捕らえる事はできずに、喉笛に噛み付かれる。首に牙を立て、より喰い込むように頭をゆする彼に、絶命前の最後の抵抗が轟く。

  その銃声を聞き、夫婦の家に踏み込んできたバッジを盗まれた保安官は、泡を吹きながら怒りの形相で銃を構えた、股間を食いちぎられた強盗にトドメを撃ち込んだ。

 この短い間に強盗の一人を絶命させ、もう一人に致命傷を負わせて幼い命とその母を守った賢く勇敢な彼は、最後の抵抗の銃声で前足を一つ失う事となってしまった。 彼の負った怪我は命の危ぶまれる程のものだったが、夫を失った妻が必死に介抱し、また彼の勇敢さを称えた保安官によって町の人間も協力し、奇跡的に彼は一命を取り留める事ができた。

 後に町の英雄となる若いガンマン。

 ガンマンの物語、小さな町の英雄譚の前半では、必ず木彫り義足をつけた老犬が登場する。

  その老犬の首輪には、綺麗に磨かれたあの時の保安官バッジが誇らし気にぶら下がっており、若いガンマンのお目付け役の彼が吠え鳴らす義足とバッチの不規則な擦過音は、『勇気の駆ける音』として、常に住人達から声援を送られるのだった――

                                     おしまい